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zoom RSS 絵画論その26 絵画にはワクが有る

<<   作成日時 : 2014/11/20 19:33   >>

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絵画は長方形の枠(わく)の中に描かれます。
そんな枠の存在について語ってみます。

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▼区切る
風景画を描く場面を想像してみましょう。描くために、目の前に広がっている世界を直接観察します。ここで、首を動かせば空や足元を見ることができますし、体をひねれば後ろまで見ることができます。しかし、その広大な光景全てを、一枚の小さなキャンバスに写すことはできません。(できないというより、慣習的にしない。)描く人は、見えている範囲のうち、どこを描くかを選び、切り取って描き写さなければなりません。

これは一見当たり前の作業のようですが、そうでもありません。実は、この地点で既に絵に「枠(わく)」という規制がかかっているのです。そして、それに気づかない人が非常に多いのです。絵に限らず、写真でもポスターでも、普通の人は中に描かれるものだけに注目するため、枠についてあまり考えていないように思えます。

以前どこかで、絵画の存在について、「部屋の壁のようだ」「窓枠で区切られた外の風景のようだ」と言いました。しかし実際はもっと複雑です。真剣に向き合った場合、絵画が置かれる役割や意味は簡単ではなくなります。枠についても、単なる「区切り」ではなくそれ以外の、役割を持つ存在となります。 (もちろん何度も解説しているとおり、楽しみで描いている場合は問題はありません。)


▼枠の無い絵
枠の役割を意識するために、極端な例を考えてみましょう。すなわち、枠のない(平面的な)絵というものはありえるのか、ということです。私は二種類思いつきました。

@大きすぎて把握しづらい
砂浜や山全体など、大自然をキャンバスにする場合や道に色を塗るなど 風景に溶け込むような絵の場合、枠を感じにくくなることがあります。 (これも広い意味での「絵」です。)手をつけたところとそうでないところの境界はあるはずですが、一度に把握できなければ、もはや無いも同然です。このような作品の場合、作り手が見えている世界全体を作品にするという意識が強いことが多く、意図的に枠を感じさせないようにしているところがあります。枠が一度に全部見えないくらい大きい、ということです。

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Aあるけど気にしない
例えば、テーブルいっぱいに広げた紙の手元に、小さく落書きを描く場合、そこには枠という概念はありません。(落書きも「絵」です。)ノートや学習机へのいたずらも同じです。この場合の特徴として、画面と絵の割合が極端ということがあります。つまり、描いているものがはみ出す可能性が無いくらいの比率で描き始めるのです。(作業を続けると描くところが無くなってきて枠を意識するようになることがあります。)

また、「(自分が)描く」という行為に重点が置かれてるため、気の向くまま描きたいものをそのまま描く、ということがあります。ここでは絵に対する理屈を考えることはほとんどありません。漫画のキャラクター像を新しく考えるために描く場合も、枠のことを意識することは無いでしょう。

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大雑把に説明してみましたが、皆さんも「枠の無い絵」について考えてみてください。


▼枠の有る絵
一度「枠の無い絵」のことを考えてみると、「普通の絵画には枠が有る」という当たり前のことについても考えることができるようになります。特に風景や静物を描く場合、はじめに画面全体の構図を決め、その後細部を描いていく、という工程をとることが多いので、絵を描く前から枠を利用していることがわかります。もちろん試行錯誤の過程で、画面を削ったり付け足したりすることはありますが、一度描き始めたらそう簡単に画面構図を変えることはありません。例えば「画面より右の部分をもっと描きたくなったから、右側のキャンバスを付け足す」ということは普通しません。一度構図を決めれば、大抵その構図のまま絵を完成まで導きます。つまり絵画では、先に枠を決めてから、筆を動かしているのです。このことからも枠の重要性がわかります。

さらに枠選びは、「見ている光景のなかから、どこをどのように取り出して描くかを決めてください」と自然界から強要されている感じがあります。これは実際に描く前の工程なのでなかなか理解されません。


▼枠が絵に及ぼす影響
一枚の紙に一匹の猫を描こうと思った場合、普通は全体を枠内に入れようとします。それは猫が好きなので、全身を余すところ無く収めたいと思うからだと思います。しかし、冷静に考えてみると、「全体をはみ出さないように、しかも余白が余らないように収めなくてはならない」という決まりはありません。むしろ、猫の魅力を表現したければ、枠を利用してはみ出させたほうがよい、ということがあります。これは絵画論4の構図のところでも説明しています。

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同じものを描く場合でも、ものと余白の関係で、受ける印象が違ってくるのです。これは、枠(範囲)と対象物の関係が変わるからです。この「関係」という概念は大変重要です。普通、枠の中に描くものを増やしていくと、関係が複雑になり、絵がどんどん難しくなります。しかし枠があることで、全体のバランスを常に確認することができます。さらに、視線の流れなども計算しやすくなり、望むところに視線が戻ってくるようにする、ということもできます。ビリヤードがうまい人は玉を周囲の壁に何度も反射させて思うところに移動させますが、枠もこれと同様に、絵の中で視線を誘導させるはたらきを持たせることができるのです。もしも枠が無ければ、視線の制御はかなり難しいものとなってしまいます。


▼枠の外
枠の中では、ものは四辺に取り込まれるため、窮屈に感じます。それを解消する方法として、一、二箇所に「穴」を開ける方法があります。といっても、実際にキャンバスを破るのではなく、対象物を欠けさせて「穴」の代わりにするのです。

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上の図ではうさぎの足が画面から飛び出ています。この部分により、枠の外の世界に通じることができ、閉塞感を解消します。つまり、画面をより大きくし、世界を広げる効果を生みます。

冒頭でも「絵は窓のようなもの」と描きましたが、窓の外の世界のように、描いて見えているところのほかにも世界があるということを感じさせることができます。他にも、人物の目線で何かの存在を感じさせたり、影のつけ方で太陽の位置をわからせることができます。 伝統的な西洋絵画はこの手法が多く用いられているので観察するといろいろ参考になると思います。


▼制約
「枠」とは単なる額縁ではありません。一定の大きさや広さで囲まれたところという意味で考えることが出来ます。枠の存在は、自由だと思われがちな絵画の世界における、数少ない制約の一つとなっています。絵は、この四辺の中に収めなくてはなりません。描くほうはこの制約に苦しむことになります。しかし、逆に考えれば、絵画を見る人も同様にこの制約を受けているのです。通常、絵画を鑑賞するときは、一度に枠全体が見える位置となるように、自主的に移動します。そのためこの制約を逆手にとって、描くものに何らかの効果を与えることが出来るのです。

例えるならば、弁当箱のようなものです。普段使う弁当箱は大きさも形も決まっています。何も考えずに、ごはんとおかずを詰め込むだけでもお弁当になりますが、配置や中身を考えることで、出来上がりの完成度を高めることができます。

枠を意識しなければ、キャンバスがぶつかるところまで何かを描き、それで終わりです。ところが、枠を意識すれば、絵に広がりを出すこともできます。また、枠の効果としてあるものを切り取ることによって、実際よりもより大きく見える印象を与えることが可能です。

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歴史的名画も、枠が曖昧だったら名画となっていなかったかもしれません。制約のぎりぎりのところの可能性を追求することで、新しい技術や表現方法が生まれ、作品の魅力となっていきます。窮屈そうな枠を意識し、利用することで、絵画ではさまざまなイリュージョンが可能になるのです。

▼閉じ込める
私は絵を描くとき、そこに何かを収めるような気持ちを持っています。キャンバスに世界を出現させると同時に、閉じ込めているのです。そして、それは他の何ものとも違う、この世に唯一の作品として存在させる、という意識も持っています。

これらを可能としているのは、やはり枠があるからです。枠が無ければ閉じ込められませんし、作品としてまとまらない可能性もあります。(枠の無い作品もあるのでこれは絶対ではないのですが。)絵画として、枠は芸術作品としての価値を位置づける重要な存在なのかもしれません。



次回はパソコンと絵画について話す予定です。

うさうさ堂の絵画論の一覧<絵画論記事のまとめ>


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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
必要のない記事は一つもないほど貯めになりました
ななっしー
2015/01/20 05:33
制限があるほうが、想像力が高まるのだとか。
http://wired.jp/2011/11/22/「制限」が創造性を高める理由/

2016/06/25 22:14

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