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zoom RSS 絵画論その22 説明絵画 -普通の人が普通に描く絵の特徴-

<<   作成日時 : 2013/12/27 21:58   >>

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今回は「説明絵画」と私が名づけた絵について話します。

▼よくある描き方
みなさんは「絵を描いてください」と言われたとき、どのように描きますか?学校や趣味で、写生をしたことがあると思います。できるだけうまく描けるように、一所懸命工夫したことでしょう。実はこのとき、特別に絵を習っていない人達に共通して現れる、ある傾向があります。

例えば、「風景を描いてください」と言われた場合。
どこから描くかは個人差があると思います。
しかし、山を描いて、家を描いて、道を描いて、人を描いて、空を描いて…とひとつひとつ順番に描いていくのではないでしょうか。
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また、こんな人物を描くとき、どうしますか?
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これもどこから描くかはわかりませんが、頭を描いて、目を描いて、鼻を描いて、口、耳、髪、体、手、足、椅子、背景…と個々の部分を順番に描くのではないでしょうか。

自由に描いているようで、これらには重要な共通点があります。それは「ものとして見える部分を説明しながら描いてしまうこと」です。

例えば、先に示した通り、普通の人は人を描くとき、「目」「口」「体」「足」と、はっきり区別しながら描いていきます。
そしてそれらを組み合わせ、「「目」を描く→頭を描く→「人」を描く」と、まとめていきます。意識していないかもしれませんが、大体そうなっています。これは線で「もの」と「それ以外」を区切りながら描いていく方法になります。

私は、「皆さんは<言葉>で絵を描いている」と思っています。あるいは「観念」や「概念」と言ってもいいでしょう。
こういう方法で描いた絵を「説明絵画」と呼ぶことにします。(またも私の造語です。)定義も解説も難しいのですが、とにかく「普通」の感覚で描いた絵のことになります。

わざわざ名付けたのには理由があります。これとは別の方法があるからです。それはどういう方法かは次回詳しく述べます。(じらしてすみません。)ただ、いわゆる西洋の伝統的名画には、この「説明的な描き方」ではない表現方法がある、ということを先回りして指摘しておきます。


▼難しい説明
一部抽象的で分かりにくくなりますが、説明絵画の解説をします。

まず、一番大切なことです。この「説明絵画か否か」という話は、具体的に描く技法や結果的に描かれた絵で分類するのではありません。その作者が絵を描くとき、対象をどのように見ているのかによります。描く前に対象を見たときの、「対象のとらえ方」が決め手になります。だから「説明絵画的な光景の見方」や「ものの観察方法」を行い、その見方をそのまま絵にしたものが説明絵画になります。

説明絵画となるのはどんな見方なのか。それは目に映る光景を機能や構造や言葉で分解し、ひとつひとつのものとして取り出して理解する見方です。難しくて固い表現ですが、そもそも本当に難しい話なので仕方ありません。

例えば先ほどの風景を見たときに、「家」がある、「道」がある、「山」があって、向こうに「空」がある、と思ったでしょう。これは、その風景を脳(おそらく左脳)が分解して、個々のものとしてとらえたのです。そうして、分けたことを、分けたままに並べて描くのが説明絵画です。つまりこの場合は、キャンバスに「道」を描き、「家」を描き、山を描き、「空」を描くのです。言葉で説明できるようなものを「一つの部分」としてとらえて描く方法とも言えます。
また、一つのものも、たくさんの部分でできています。だから家を描くときは屋根を描いて壁を描いて窓を描いて…と家を構成しているものを細かく描いていきます。これは入れ子構造になっています。先に全体をざっと描いてから部分を描くことも、部分を並べて全体を作っていくこともあるでしょう。どちらにしろ、対象を常識的な「もの」として認識し、わかりやすい概念で分割して描く方法になります。

これがほとんどの人がする、説明絵画の描き方です。「私はそんな難しいこと考えてやっていない!」と思うかもしれません。それは、一般人の当り前の行動でも、分析すると難しく聞こえてしまうだけです。実際ほとんどの人がこういうプロセスで絵を描いているのではないかと思います。

ということで、説明絵画の定義を
「対象を種類・機能・構造(・言葉)で分解し、
それぞれを一つのものとして、画面上に並べて構成する絵」
としておきます。


▼説明図
「説明絵画」という言葉から「説明図」のことをを連想する方もいるかもしれません。言葉は似ていますが、関係ありません。

説明図は「何かをわかりやすく説明するために用いられる絵(または図)」です。私が指摘する「説明絵画」とは「説明」で作られた絵になります。説明が目的か手段かという違いになっています。ただ、ほとんどの説明図は説明絵画で描かれている、と言えると思います。


▼漫画も説明画
説明絵画にはいろいろな仲間があります。一番わかりやすいのが漫画の絵です。最近はいろいろ漫画があるので、その絵柄について一言でまとめることはできませんが、それでも全体の傾向として、説明的な絵であると言って間違いはないでしょう。

漫画は一コマ一コマ時間をかけて丁寧に描くことはあまりありません。締切があり、読む方もそこに「名画」を求めているわけではないからです。「漫画の絵は記号的である」というフレーズはどこかで聞いたことがあるかもしれません。故赤塚不二夫の絵を連想してもらえばわかるように、必要最低限の記号で絵を構成しています。そこに使われている記号は明示的で、非常にわかりやすいものです。

例えば、丸をを3つ描けば顔に見えます。これを見れば読者は「顔だなあ」と思います。しかし、現実にそんな顔の人間はいません。なぜこれを顔だと思ってしまうかというと、そういう「約束」だからです。
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読者は、そこに何が描いているかを読み取り、漫画を楽しみます。

脳科学的に「点3つを顔と認識する細胞がある…」という話もありますが、ここでは「作者が何を思って描いたのか」という事が重要です。作者が読者に「これを顔だと思ってくれ」と描き、読者も「これは顔だよね」と了承して読むわけです。これが「約束」です。顔だけでなく、体も、動物も、小物も、背景も、漫画はそうやってできています。

若い人には想像し辛いかもしれませんが、年配や外国の人が日本の漫画を読んで、そこに何が描かれているのかわからない、ということがあります。私たちがそこに何が描かれているのか分かるのは、漫画を読みなれていて、どういう約束で描かれているのかを知っているからなのです。


▼お題で描く絵も説明画
バラエティの企画で、紙とペンを渡され「○○を描け」とお題をもらって、速攻で描いてその上手い下手を楽しむというのがあります。こういうお題を言われる場合、そのお題のものはその場に無いことが多いです。つまりノーヒントなので、頭の中にあるイメージを描くことになります。絵になじみがない人の場合、ここで「説明的な絵」を描いてしまいます。

例えば「象」を描けと言われた場合。「象は、体がでかい、太い足4本、鼻長く耳がでかい、しっぽがちょろっと、目が小さい…」ということは誰でも知っています。そしてこのような情報を組み立てて絵を描いていきます。それがうまくいくと「あ〜普通はそうなるよね」という反応が返ってきます。
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本物が無く、下書きすら許されないような状況で描く絵がこうなってしまうのは、むしろ当然です。これも説明絵画の一種です。


▼漢字も説明絵画
説明絵画は「約束」の度合いによっていろいろな段階がつけられるのではないかと私は考えています。約束に頼るほど、絵をシンプルにできます。この単純化をどんどんしていくとどうなるでしょうか。なんと最終的には「文字」になります。
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説明絵画は、「説明」や「情報」が絵の主な要素になっています。そのため「言葉による説明」も同じ基軸に並んでしまうのです。特に象形文字は、一文字で元のものを表しており、その知識がある人はそれを見ただけでもとのものを連想します。その文字が、それを表すという約束だからです。逆に、説明や情報を少しずつ細かく配置していくことで、一般的な説明絵画のほうに近づいていきます。説明絵画は「部分的に何を描いたかを言葉で説明できる絵」のようにも定義できます。


▼ちゃんと見て描いても
漫画、お題を与えられて描く絵、漢字。これらはどれも「約束によって簡潔に描かれた絵」という共通点があります。どれも「説明」を描くことで、対象物を省略して表現しています。逆に言えば、何が描いてあるか相手に説明できれば、細かく描く必要がない絵、となっていました。

では、一所懸命細かく描いた絵画はどうなるでしょうか。はたしてこれは説明絵画でしょうか。一見、展覧会に出せるような、いわゆる「ちゃんと描かれた絵」は、上で挙げたような絵とは違う分類になるように思えます。簡略化された部分が無いように見えるからです。

ところがそれも、説明絵画である可能性があります。というより、細かく描いてあっても、世の中のほとんどの絵は説明絵画です。説明絵画かどうかは描くときの方針、考え方、対象の見方や捕え方によるものなので、どの程度細かく描くかは関係ないのです。だから、細かく描いたような絵でも、ひとつひとつを説明するように描いた場合は説明絵画ということになります。そこにはいろいろ約束が含まれていることが多いのです。

いやいや、きちんと「リアル」に「写実的」に描いているではないかと思うでしょう。ところが、それらは「〜と見てね」と約束を描いているにすぎません。あるいは「ここに○○を描いたよ」と説明するように描いているように見えます。

例えば、リンゴを描く場合。リンゴを見てみましょう。
@周囲の輪郭は肩の張った楕円
A全体的に赤色
B上に芯があって芯が出ている
Cまだら模様がついてる
ということがわかります。

そのように見たら、相互のことを考えず、順に@ABCの説明を絵にしていきます。赤く、独特のあの太刀を描き、影をつけ、うっすらまだら模様を描きます。そして見る人も「赤くあの形をして影がついてうっすらまだら模様がついているからこれはリンゴだな」と理解します。

これがリンゴだと理解できたのは、絵の中で「この部分はリンゴだ」という説明をしているからです。その過程においていろいろ「約束」を使って相手に理解させています。例えば「赤くこの形のものはリンゴの可能性が高い」とか「この黒っぽいところは影の部分だ」ということです。これら説明によって見る人がリンゴだと理解します。

こうやって言葉で説明できるような部分を直接描いた絵を説明絵画と呼んでいるのです。だから、細かく描かれているかどうかは、説明絵画か否かという区分と関係ないのです。




(毎度のことですが)すぐには何を言っているのか理解できないと思います。特に、「説明的でない絵はあるのか?」と思うかもしれません。区別するために名前を付けたのですから、もちろんあります。

とりあえずは、(絵の専門家でない)普通の人が絵を描くと、想像画でも写生画でも、ほとんどが説明絵画になる、ということだけ押さえておけばよいです。

次回、説明絵画でない絵の話をします。そのほか今回の話だけでは分からないことは、次回と併せて読めばわかるようになる可能性が高いです。

次→一か月以内に更新目標
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