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zoom RSS 絵画論その14 立体論U-写真を見て絵を描くこと-

<<   作成日時 : 2011/08/30 19:30   >>

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写真と絵の関係


今回も「立体論」と看板を掲げてしまいましたが、実際は「立体じゃ無い論」かもしれません。「絵画と写真」という、皆さんも一度は気になったことがあるであろう関係に触れます。

▼写実画と写真は同じ?
絵画を見たときのほめ言葉で、「まるで写真みたいに良く描けている」という言い方があります。この言葉は多くの人が日常的に使っています。なぜ絵画と写真を結び付けてしまうのでしょうか。それはおそらく、写真と写実画は共に現実世界の一部を切り取り、立体を平面に置き換える表現芸術という点で同じだからでしょう。

また、写真は機械的に作られ、できあがった作品も現実そっくりなのに対し、写実画は人の手で描かれ、現実感を出すのは大変難しいものです。そのせいか、「写実画の完成形は写真だ」(写実画は写真を目指している)と一般には思われているかもしれません。

そのような中、人々が写真を見て(使って、参考にして)絵を描くようになりました。少し昔まであまり無かったことですが、今ではごく当たり前のことになっています。
(これは、写真が一般に普及するようになったことによる、絵画の世界への影響の一つです。このような他のメディアの普及によって変わった絵画の世界の話は別の機会にします。)
写真は現実そっくりです。実際のものを見るか、そこを写した写真を見るか、被写体としての違いはあまり気にしない(話題にしない)のが普通なようです。

しかし、現実のものを見て描くのと、写真を見て描くのでは結構な違いが有ります。それは現実世界のものが持つ空気や匂いの違いといった情緒的なことだけではありません。写真が持つ原理的なことで、視覚的な違いがあります。このことは一般にはあまり意識されていないようです。

今回はそんな被写体としての違いを話してみたいと思います。


▼被写体としての写真の特徴
被写体としての写真の特徴を、現実と比べてまとめてみます。

@立体感が無く平面的

立体感がつぶれた写真
重なりの激しい写真の例

手前から奥にかけてものが重なり、くっついています。このような写真からは個々のものはもちろん、全体の構成も分かりづらく、情報が取り出しにくいのです。前回も書きましたが、写真では立体がつぶれてしまいます。これが決定的に響いてきます。ものとものの重なりが伝わってこないので、奥行きの情報もとれず、全体の調和を取るのが難しくなります。

写真を使って立体的な絵を描こうとするならば、一旦頭の中で立体的な空間を想像しなければなりません。その頭の中の空間を描くのはかなり難しいことです。

A画面全体がまんべんなく写し出されている

直接風景を見た場合は、目に付いた、印象の強いところを絵の中心(テーマ、主題)にするのが普通です。その時、道のごみや画面から外れたビルの影、中途半端に切れた自動車などの興味の無いものは意識しないか無視されます。それは脳の自然な働きです。このようないらないものは、絵では弱くしたり、位置を変えたりします。消えてしまうこともあります。絵を描くには余分なものまで含まれてしまうからです。

写真の場合、このようなことを考えることができなくなってしまいます。写真の上ではどれも同じように写っているためです。

絵画では見たものを見たままに書く必要は全くありません。必要なければ削ってしまうのが自然です。写真はどれも均一に写っていることや、「実際にものが写っている」という理由で、どれも同じ力でそのまま描いてしまいます。すると全体的に煩雑だったり、メリハリが無くべったりとしてしまいます。

B明暗、光の捉え方

明暗がつぶれた写真
細かいところがつぶれて分かりづらい写真の例

目でものを見た場合、その場所の明るさによって瞳孔が開いたりすぼんだりします。その変化があるので人は混乱せずにものを判別して見ることが出来ます。写真は1枚1露出なので、カゲが真っ黒くつぶれていたり、光が白く飛んでいたりと、絵を描くには情報不足のところが出てくる場合があります。

C写すだけになりがち

よくしてしまうのが、絵を「描く」のではなく、「写す」という行為を優先してしまうことです。これが一番分かりづらいようで、なかなか理解していただけないことが多いです。

写真は、機械を通してこの立体世界を捉え、平面上にとても分かりやすく見せてくれます。また、一枚の写真の中に、カメラや被写体や撮り方などの創意工夫を凝らすことができます。それは間違いなくひとつの芸術世界です。
ただ、その写真を、人が単に模写しただけでは、直接この世界を見て描くより一段浅くなってしまいます。それは、現実との間に一枚フィルターが掛かっているとも、ビデオテープを再ダビングしたような劣化具合ともいえます。

写真を見て、真面目に、丁寧に時間をかけて描き写すと、ある程度、素敵な絵が出来ます。さらに、描けば描くほど、写す技術が目に見えて上達します。しかし、絵を描くことは単なる作業ではなく、いろいろなことを考え、計算しながらする行為です。ただ写しているだけだと、それに気付きにくくなります。これらのことを意識しないと、絵を現実のほうではなく、写真のほうに近づけることになってしまいます。



▼縛られないように
これらのまとめから、写真をそのまま写すだけでは、現実そっくりな写実画を描くことができないということに気付くでしょう。「写真を厳密に写さなければならない」というのは縛られた考え方です。これにこだわる必要は無いと気付くだけでも、描き方にぐっと幅が出ます。ようするに写真を見て絵を描く方法はいろいろある、ということです。

具体例を出しましょう。これらは共に私が写真を元に描いた絵です。

白黒写真とそれを写した絵


左が古いモノクロ写真で、右がそれを鉛筆で描いた絵です。古い写真そのものの魅力を出すことを意識して描き写しました。

猫の写真とそれを元に描いた絵


これは写真を参考に猫の絵を描きました。立体感を出し、猫にとって余分なもの(背景や床)を削りました。明暗を強調してより生き生きとなりようにしました。写真は参考にとどめているため、全体的にいろいろと変わっています。猫の顔の角度が変わったのもそのせいです。

この2枚の違いは原理的には次のようになります。
写真を単に写しただけの絵
写真を元に立体を復元する絵

Aが写真をそのまま描く方法。Bが写真を元に創作する方法です。細かい説明は避けますが、図のりんごに注目すれば、写真や絵の関係がどうなっているのか分かると思います。特に、もしも絵に立体感を出したいのであれば、アレンジを加えたほうが良い、と言えます。



以上、写真から絵画を描くときに気をつけてほしいことをあげてみました。大切なのは写真を見て立体的な写実画を描こうとすると(現実のものを見るより)かえって難しくなる、ということです。

これはあくまで立体的な写実画を描くときの話です。写真を見て描く方法が有効なこともあります。時間、健康、金銭などの都合で、直接描けない風景も、写真を使えば描くことが出来ます。また、実際に見えるものを変化、誇張して他のものに表現し直すときも写真は効果的です。

また、冒頭で「写実画の完成形が写真だと思われている」と書きましたが、実際には写実画と写真は全然別のものだったということもお分かりいただけたと思います。

以上のような写真のもつ性質を知れば、より絵の世界を楽しめるかと思います。


次回は絵画論その15 立体論V-立体を描く方法-(仮)です。

うさうさ堂の絵画論の一覧<絵画論記事のまとめ>

文章推敲係:個人的に今回は写像の話(写像論)だと思っています。

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内 容 ニックネーム/日時
写真と絵画は面白いですねぇ・・・ほんとに似ている2つだけど、写真は「光と影の記録」、絵画は「物を見た人の記憶の再現」と言えるかなぁ・・・記憶だから、個人によって歪んだり、変形したり、色が変わってしまったりしてもOK。それが絵を描いたり、見たりする楽しさかなぁ・・・いろんなこと考える絵画論ですねぇ・・・
マミケン
2011/08/31 12:44

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