うさうさ堂blog

アクセスカウンタ

zoom RSS 絵画論その5 <ものとその周囲>から<地と図>の関係へ

<<   作成日時 : 2009/04/05 17:36   >>

なるほど(納得、参考になった、ヘー) ブログ気持玉 7 / トラックバック 3 / コメント 2

▼認識してしまう「もの」とは何か
前回は「もの」の周囲がそのものに大きな影響を与えていることを説明しました。
では、その「もの」とはなんなのでしょうか。

一般に、観察しながら絵を描く時、皆さんはそこに存在する「もの(=形ある何か)を描く」ことだと考えるでしょう。実際に見てみます。下図をご覧下さい。四角い枠の、いくつかの絵があります。

画像


それぞれ何の絵かは分からなくても、それらを見て、皆さんはその枠の中に「何か」が描かれていると認識したでしょう。その「何かが描かれてあると認識したところ」は矢印で指し示した色の部分なはずです。(当たり前のことを難しく言っただけです。左上の絵を見て「白くて丸い部分がある」と思いましたよね、ということです。)
その、「何かが描かれたと認識してしまった部分」を「もの」と、この絵画論で呼んでいます。
この「もの」は、「バナナ」や「リンゴ」のような名前のある形態をさすことが多いのです。

その性質を上の図から考えていくと
@から、閉じられた空間のほう(丸い部分)を「もの」と認知されやすい。
Aから、内向きの線で囲まれたほうが「もの」となりそうです。
「もの」と認識するのに、形の大小、色の濃淡は関係しないということも分かります。



これ以上は脳の構造の話になるので必要ありません。とにかく、人は絵を見たときに何かを優先的に認識しているということを理解してください。



▼リンゴは本当に丸くて赤いのだろうか
さて、さんざん「もの」と言い続けてきましたが、実は絵を描く時にはこの「もの」は「図」と言い、「もの以外(の部分)」は「地」と言ったのほうが良いのです。

なぜこのような面倒臭いことを言っているのかにはもちろん理由があります。
それは絵を描く時、皆さんが気付かずにやってしまう癖があるからです。

学生の頃の野外写生を思い出してみてください。空を色塗りする時。空が青いからと青色の絵の具を出して青で塗り、野原を黄緑の絵の具を搾り出して塗り…で、最後は塗る色がなくなって黒を混ぜたり白を混ぜたり。仕上がってみると、実際の明るい風景とは似ても似つかず、どんよりとにごった絵になってしまった。このような経験は誰にでもあるのではないかと思います。

なぜこうなるかをリンゴを例にとって説明します。
「もの」であるリンゴを観察して描く時、皆さんは形をしっかり確認しないで(意識できずに)頭の中の「リンゴは丸い」という常識を働かせて描いてしまうことが多いのです。
色についても同じです。リンゴは「赤」、だから赤い絵の具を探してそれを塗ってしまいます。
このとき頭の中では実際の形や色よりも先入観(言葉、概念、常識)が支配しているのです。
この先入観の力が想像以上に絵を描く皆さんの心と手を縛っています。

実際はいろいろな形や色を見ているはずなのに言葉にできる「もの」だけしか認知できず、言葉で表せないその他の部分が目に入っていないのです。
絵を描くとき、私たちは一度言葉の呪縛を解き放つ必要があるのです。
その方法のひとつとして<「もの」と「ものの周辺」>を<「地」と「図」>という無機質な言い方にして再認識できるようにすることが有効なのです。

次回は「地と図は2つで1つ(仮)」です。

うさうさ堂の絵画論の一覧<絵画論記事のまとめ>


(以下、編集担当から) 難しいのでまとめてみます

  (先に定義)「もの」とは、何かをパッと見たときに認識してしまう対象物のこと
  (問題点)  普通の人は観察して絵を描こうとしても先入観で描いてしまう
  (理由)   それはわかりやすい「もの」だけが見えて、それを知識で描いてしまうから
  (提案)   (地と)図とという見方に変えてみる(この意識についての説明は次回)

もっとまとめると
普段何かを見る時にしてしまうこと(「もの」という見方)を、描く時は(「(地と)図」という見方に)変えてみよう
ということです。

・観察して写真のように正確に描く方法についての話です。
・色の話はまた別の時に詳しくします。
・問題提起だけで終わり、中途半端な感じがしますが、それは次回に続いているからです。

原稿を打つ当たって侃々諤々の議論になりました。第4回から第6回まで合わせて一つになりそうです。分からないことだらけでしょうが、次回と合わせて考えてみていだだきたいです。

(以下蛇足なので余力のある方だけお読み下さい)
「ものともの以外」を、「地と図」とわざわざ呼び直した理由(名前を変えた理由)が次回にも無いようなので先に説明してみます。これは 「線(色?)で区切られた二つの部分」 の関係性の話なのです。「もの」と「もの以外」という呼び方では、「もの以外」は「もの」がなければ存在できないかのような関係になります。(「もの」は「もの以外」がなくても存在できます。)よって従属関係となっており、この二つは対等な関係ではないのです。「地」と「図」という呼び方はそれぞれお互いがなければ自分も存在できないという関係です。どちらが先にあるということでなく、生まれるときは両方同時です。絵画はこの様な意識で描いてほしいということらしいです(ここまではっきりとした表現でなくていいと思いますが)。また、別の表現を使えば、前者の関係は「もの」を中心に見た「絶対的関係」、後者は「相対的関係」とも言えるようです。この「要素を相対的に見ていくこと」が絵を描く上で大事なのだそうです。

テーマ

注目テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ
気持玉数 : 7
なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー) なるほど(納得、参考になった、ヘー)
面白い 面白い
ナイス

トラックバック(3件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
絵画論その9 「十兎図」 -絵画の段階的変化-
絵を描くことは、筆記用具があれば誰でも始めることが出来ます。 ...続きを見る
うさうさ堂blog
2010/05/20 23:35
<絵画論記事のまとめ>
これまでの絵画論の記事のまとめです。 ...続きを見る
うさうさ堂blog
2010/09/09 14:53
絵画論その13 立体論T-この世界をどのように見ているか-
平面から立体へ ...続きを見る
うさうさ堂blog
2011/06/05 21:20

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
頭にたたきこんでおきます。
 このブログを読ませていただいている私は『トクだなあ』

 松本美術研究所の皆は読むべし!!!
せっちゃん
2009/04/13 14:26
四角い黄色いリンゴがあったら、それをどう描いたらリンゴと見る人に分からせられるのだろうか?う〜〜む。マグリットの絵たちはそんな常識を打ち破り、見ている僕らはめまいを感じる。
マミケン
2009/06/24 16:47

コメントする help

ニックネーム
本 文
絵画論その5 <ものとその周囲>から<地と図>の関係へ うさうさ堂blog/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる